ある生徒さんが、ランゲの「小さなさすらい人」を練習しています。
「さすらい人」
不思議な言葉ですよね。
自分が子どもの頃、この曲名を見た時には「ピノキオの冒険」や「母をたずねて三千里」を思い浮かべたものです。
さすらう(流離う)
広辞苑によると、
身を寄せる所がなくてさまよう。
さまよいあるく。
流浪する。
源氏物語須磨「はかなき世を別れなば、いかなる様に―・へ給はむ」。
源平盛衰記7「習はぬ旅に―・ひつつ」。
「荒野を―・う」
このような意味があります。
孤独な存在である人間の本質を表す言葉の一つのように感じます。
ランゲの「小さなさすらい人」は、そのような印象は受けません。
どちらかというと、楽しげで知らない土地への子どもらしい憧れのような雰囲気があります。
シューベルトの歌曲「さすらい人」、ピアノ曲「さすらい人幻想曲」、フリードリヒの絵画「雲海の上のさすらい人」など、「さすらい人」はロマン派芸術のモチーフになっています。
流離うとは、自分の心の中をさまようことなのかしら。
肩が触れそうなくらい近くにいるのに、とても生き生きと元気な演奏なのに、生徒さんの「小さなさすらい人」を聞きながら、そんな思いが浮かびました。