東京・春・音楽祭は上野を中心にした会場で開催される音楽祭です。
その中のセルゲイ・ババヤンさんのピアノリサイタルに行ってきました。
2022年3月29日(火)19時開演
東京文化会館小ホール
プログラム
J.S.バッハ(ブゾーニ編)
無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番ニ短調BWV1004よりシャコンヌ
シューベルト(リスト編)
『美しき水車小屋の娘』S.565より
第2曲水車小屋と小川
『12の歌』S.558より
第8曲糸を紡ぐグレートヒェン
第2曲水に寄せて歌う
ラフマニノフ
練習曲『音の絵』op.39より
第5番変ホ短調
第1番ハ短調
『楽興の時』op.16より
第2番変ホ短調
第6番ハ長調
リスト
バラード第2番ロ短調S.171
シューマン
クライスレリアーナop.16
久しぶりの上野駅。
公園口を出ると・・・
?
道路が無い。
広場になっていて、横断歩道を渡らずに東京文化会館に行くことができました。
静かな会場の席に、静かに腰をかけ、静かに開演を待ちました。
演奏者によって、観客席の雰囲気は全く異なります。
この日はピアニストと思われる若い男の方が多く、とても落ち着いた客席になりました。
一曲目のバッハ・シャコンヌ。
ババヤンさんの音、温かみを感じます。
思慮深く、自然です。
バッハですから、対位法のメロディーがいくつも聞こえてくるのは当たり前なのですが、和音の一音一音が聞こえてくることに驚きました。
美しい音楽に身を委ねていると、いつのまにか目から涙が・・・。
シューベルト。
とても細かい音型の伴奏ですが、ここでも一つ一つの音が語りかけていて、歌に寄り添い、時に本音のようにつぶやきます。
シューベルト、本当に素晴らしい音楽ですね。
ラフマニノフの音の絵と楽興の時の迫力は大変なものでした。
迫真の演奏・・・祖国を後にしたラフマニノフの心情を思うような・・・なのですが、聴衆を凌駕するようなものでは無く、私たちにラフマニノフの音楽を見せてくれました。
リスト、バラード2番。
どうやったら、あんなに深みのある低音を鳴らせるのでしょう。
そして、あんなに繊細な弱音で歌うことができるのでしょう。
またしても目から涙が・・・。
シューマン、クライスレリアーナ。
さらにロマンチックな、だけれど大変自然で繊細、大柄なババヤンさんですが可憐な野の花のように儚く美しくです。
涙も止まり、自分でも驚くくらい音楽に集中していました。
そして、アンコールはバッハのゴルドベルク変奏曲のテーマ(アリア)でした。
トリルやモルデントも含めて、全ての音という音が意味を持っています。
その音が紡ぐ音楽に、私はピアニストの魂の傷をぼんやりと感じました。
平和な現代の日本に暮らす私には決して理解することができない、遠い国の紛争。
でも、戦争の被害者は私だったかもしれないのです。
カーテンコールでのババヤンさんの紳士的なお辞儀と胸を手に当てての笑顔に、こちらからお礼を言いたいと思いました。
それにしても、自分の演奏がどれだけ雑なんだろうと猛反省。
いつでも音を出す時には心を込めて歌うようにしよう。