何年か前の冬の寒い日、病院の待合室で偶然お隣に座ったご婦人に話しかけられました。
重い持病を抱え定期的に通院されている方でした。
何回かの手術、投薬治療、さまざまな検査、ご自分のことを簡単に教えてくれました。
私には想像もできない過酷な時期もあったことでしょう、でもこのご婦人は時々微笑みながら穏やかにご自分のことをお話ししてくれました。
お話を伺っていて、私はこの方が主治医の先生を信頼し、尊敬していらっしゃることに気づきました。
「今日の朝、お洋服を着る時に笑っちゃったのよ。
今日はどのセーターを着ようかしらと考え込んじゃったのだけれど、私3枚しか持っていないのよね。
その3枚をこんなに悩んじゃう自分がおかしくて。」
私はこのお言葉を聞いて、涙が出そうになりました。
今日は病院に行ってお医者さまにお会いするから、セーター3枚の中から真剣に選ぶ。
お召しになっていたセーターはきちんとお手入れされ、フワフワとそれは暖かそうでした。
相手を思いやるお気持ちの深さに心を打たれました。
私のクローゼットの中には洋服が溢れんばかりに入っています。
でも、こんな風に周りの人たちに心を砕いて服を選ぶことがあっただろうか?
洋服を一着も買わなかったこの春、このご婦人のことが懐かしく思い出されました。